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「旅路」
数年前に手に入れた古いトランクの中にそれはあった。 小さな皮張りのその手帳には、ある一人の男の長い旅路が綴られていた。 小さな字で丁寧に描き出されたその彼の旅路を、 私は一つ一つ読んでいく。 彼は長い旅路の中で多くのものに出会った。 喜びも悲しみも、あたたかさもつめたさも。 すべてが彼を作り出す一つ一つのpieceとなり、 彼の中にひとつの地図を描いたのだ。 やがてその物語は、国や言葉やあらゆるborderを越えて、 まだ見ぬ異国の地へと私を誘う。 旅終わりに、彼は何を見つけたのだろう。 広大な、少し鈍色がかった海を見つめながら、 私は、託された古い手帳に新たな旅を書きはじめる。 |
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